『ガラコと破界の塔』。

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 もう先週の金曜日になるのですが、、こいでさんのマスターで、『ガラコと破界の塔』をプレイしてきました。

 『ガラコと破界の塔』(以下『ガラコ』)というのは、同人のTRPGシステムです。同人と言ったって、デザイナー始め、プロの方が何人も参加していて、その品質は万全です。ただ、テーマやシステムやその他至る所が、「あ~、確かにこれは商業で出せないよね」というシロモノなので、いわばプロが作った趣味に走ったTRPGです。

 

 ガラコの背景世界。

 ガラコの舞台となるのは、うち捨てられた植民惑星ノルヴァ17。植民はされたのですが、地球との連絡に使われていた星間ゲートが謎の原因で破壊されてしまい、以降200年間にわたって地球や他の星と連絡が取れなくなってしまいました。そのために、文明は徐々に崩壊し、テクノロジーレベルは下がってしまって、工業製品は新製品はほとんど作れず、既製品か過去作のデッドコピーしか内という状態です。まあ、簡単な話、アフターホロコーストものみたいな世界です。

 惑星の自然環境は厳しく、昼は40度、夜は零下100度という世界。一部の種族(ノーマッド族)を除き、外では生活することは出来ません。なので、人々は天蓋都市と呼ばれるドーム・シティに暮らしています。この天蓋都市も、ゲートが壊れる前には20くらいあったようなのですが、現在ではほとんど行き来が途絶え、生き残っている天蓋都市がいくつあるかは、誰も知りません。狭い居住圏に大量の人々が暮らしているので、都市は大変に過密しています。言ってみれば、天蓋都市の中はボトムズのウド(あるいはその元ネタのブレードランナーの都市)、外はマッドマックスや北斗の拳の世界ですな。

 こんな過酷な環境ですから、普通の人間は、生身で外に出ることが出来ません。で、外に出るためにはパワードスーツ『ガラコ』を身につけることになるのです。

 で、この世界で人々を脅かしているのは厳しい自然環境やそこに住む現住生物だけではありません。ドローンと呼ばれるロボットたちも、人類の敵としてはびこっています。

 ドローンは、元々この惑星のテラホーミング用に作られたロボットたちなのですが、プログラムが何らかの理由で暴走してしまい、今や惑星環境も人工都市も、現住生物も入植者も区別が付かなくなって壊しまくっています。そして皮肉なことに、このドローンたちを生産しているコンピュータ制御のロボットプラントが、今や惑星唯一の機械製造プラントでもあるのです。つまり、ガラコのような機械を維持、修理するためには、ドローンを倒してそのパーツを流用するしかないのですね。

 こうして、ガラコ及びガラコ乗りたちは、人類の生存権を守るため、そして機械のパーツを手に入れるため、ドローンたちと戦うのです。

 

 ロボット物というのは、実はロストテクノロジーと相性がいいんですね。つまり、突出した技術を持ち出すためには、過去に失われたロストテクノロジーの遺産であるとするのが一番わかりやすく、扱いも簡単なわけですよ(お話に都合の悪いテクノロジーは、あったかも知れないが発掘されなかった、としてしまえばいいので)。考えてみれば、巨大ロボット物の元祖『マジンガーZ』も、元々のテクノロジーは古代ミケーネのロボット技術からでしたな。

 とにかく、ロストテクノロジーとしておけば、デザイナーや背景世界設定者やゲームマスターがゲームをコントロールするのが簡単なので、ロボットRPGではよく使われます。バトルテックも、あれ、ロストテクノロジーですからねえ。

 ロストテクノロジーだと、パーツを手に入れるにもいろいろ制限がかかることになります。ここらへんがデザイナーにとっては都合がよく、かつ面白く出来るポイント。ガラコの場合、それをやっつけた敵から奪い取るというシステムにしたわけです。

 

 そう、こういうの、燃えるんですよねえ。コンシューマゲーム機のアクションゲームの傑作『モンスターハンター』シリーズを持ち出すまでもなく。狩猟者の血が滾るというか。

 

 そして、ロボットなので、このパーツを好きなように使って、自分の好みにカスタマイズ出来る。

 マイロボットですよ。ワクワクするでしょ? やっぱりマイロボットはデザインしてナンボですよねえ、『フロントミッション』や『カルネージハード』みたいに。(とか言いつつ、自作のザブングルRPGはWMをデザイン出来るようには出来てませんが)

 

 微妙に終末に向かっている世界の雰囲気は、実はあまり好みじゃありませんが、他の点に於いてはものすごく好みの要素が詰まったTRPGシステムです。

 

 なので、ずいぶん前から気にはなっていたのですが、このたび、こいでさんがマスターをやってくれると言うことになったので、さっそくプレイヤーとして参加しました。シナリオは基本ルールに掲載されたもの。

 

 

 で、こいでさんのマスターなワケですが......こいでさんが、また小物に凝る人でして。

 以前もこのブログで紹介したD&D4thの、立体マップとか、ギミックたっぷりのマップとか、そういうものを作ってくる方だったのですが、今回もまたかなりの小物を作ってくれました。

 まず、ガラコのコマ。

 

20150612_042356767_iOS.jpg

 

このように、手足胴体コクピットエンジンとパーツに分割されてます。で、これを、選んだパーツを組み合わせて、

 

20150612_052417000_iOS.jpg

 

 こんなふうに組み立てるわけです。マイガラコですよ、マイガラコ。自分でカスタマイズしたとおりの、ガラコです。

 駒だけじゃありません。ガラコのスペックシートも凝ってます。

 

20150612_043151421_iOS.jpg

 シートにスロットがあって、そこにパーツの性能が書かれたチットを選んではめ込みます。

 これで手早く、パーツの換装が出来るわけです。

 通常はシートに手書きで書くわけですが、これを使うと素早く換装が出来ます。だいぶ、時間の節約になります。特にルールブックがプレイヤーに1冊ずつあるわけではない時には重宝します。

 ......あそこに書かれたパーツ全部に関して、予想プレイヤー数分これを作るとなると、気が遠くなりますが。私は。

 ホント、こいでさん、ヒマ......いや、マメだなあ。

 

 で、もちろん、こいでさんのことだから、舞台装置たるマップにも凝ります。

 

20150612_052821000_iOS.jpg

 今回も凝ってますね。

 今回は舞台が塔なので、丸いマップです。ついでに言えば、基本的に今回の戦闘遭遇はどのフロアも、丸です。

 というわけで、この凝ったマップで、凝ったコマを動かして、バトルです。

 

 話の方は割と単純。天蓋都市の近くに破界の塔(ドローンの惑星改造機兼生産プラント)が作られようとしている。それを阻止したものには賞金を出そう! というわけで、破界の塔に乗り込みます。で、そこを守るドローンたちと戦闘。

 

 この戦闘遭遇がねえ、また実によく出来ているんですよ。

 まずチュートリアルとして、徐々にルールを説明していく上でもよく出来ています。

 その上、いわゆる戦闘バランスとしてもよく出来ていまして、死ぬか生きるかのぎりっぎりのラインで戦闘が進みます。実に絶妙です。

 さらに、各フロアで戦闘に勝利して、敵からパーツを剥いで強くなるわけですが、この強くなり方もまた、実にバランスよく作られています。

 実によいシナリオです。

 これ、かなりの回数、テストプレイしたのでしょうね。素晴らしいまでに絶妙なバランスで、戦闘もチュートリアルも出来ています。

 我々は全3回の戦闘のうち、2回目の戦闘で、一人PC(とガラコ)を失いましたが、なんとかそれ以上の被害を出さず、ゲーム内の時間内に破界の塔を止めることが出来ました。

 ま、このシナリオ、基本ルールに付いているシナリオなんで、あまり詳しく戦闘の経過を描写するのやめておきますね。

 

 20150612_092741000_iOS.jpg

 

 で、プレイした感想。

 すごく簡単に一言でまとめてしまうと、『これは、バトルテックの皮を被ったD&Dだ......!』

 ま、「バトルテック」は説明しなくてもわかりますよね。ロボット物だし。パーツの組み替えとか、一見バトルテックみたいに見えます。

 ですが、プレイ感覚が、実にD&D。

 いや、スクエア使った戦闘だからD&D4thっぽい、といっているのではありません。

 そういう点も当然ありますが、戦闘バランスが、D&D(クラシックから3版4版5版まで)に通じる一撃で死にうる危うさの元に成り立っているところとか、細かなプレイの感触がD&D。

 敵からはもちろん、倒れた味方からも、パーツを奪い、そうしないとやられてしまうと言うシビアな世界観もD&Dっぽい。

 敵に「弱体化」というバッドステータスをつけダイスにペナルティが付くようにし、どんどん相手を弱らせて、最後にとどめにエンジンやコクピットを狙うという戦闘過程もD&D(4th)っぽい(この点だけで言うなら、MERPやロールマスターにも似てますが、MERPやロールマスターは結果としてそうなってしまうのに対してガラコはプレイヤーが選んでやらなくてはならないところがD&D4th的)。

 

 趣味のロボット物RPGを作っている私としても、大変参考になるアイディアがたくさん詰まっていました。

 

 例えば、HPの数値管理みたいなことは一切しなくていいところとか。これ、私も考えていたのですが、実際にそれでやれる、というひとつの回答例を見せてもらったのは大きいです。

 あるいは徐々にロボットを弱らせる方法とか。ロボット物というのは、命中箇所を決定する場合が多く、それはビジュアル的にもかなり魅力的なものなのですが、そのためにダメージが散らばり、なかなか敵が倒れないという事態が起こりやすくなります。

 バトルテックは、それで戦闘長引くんですよねえ。戦闘の趨勢が見えてきてからこれが起きると、実にだれます。ガラコの場合、「弱体化」というバッドステータスが付き、ダイス目にペナルティが着くようになります。なので、徐々に弱っていきます。HPではなく。

 これは実にスマートな処理の仕方だと思います。

 

 逆に、ガラコでも処置し切れていない問題点もありました。例えば、マスターが操る敵の管理の仕方は、かなり簡略化されているとはいえ、他のロボット物TRPGのように結構な負担になるレベルのものです。サブマスターが欲しくなるシロモノでして、ここらへんは改良の余地があるなあ、と思います。

 また、プレイヤーメカに自由なカスタマイズを許してしまうと、戦闘バランスはとりにくくなります。今回はシナリオが優秀で、絶妙なバランスを楽しめたのですが、オリジナル作ったら、(みんながベーシックフレームで始めるというならともかく)かなりバランスとりは難しくなるでしょう。

 というか、現状ではテストプレイ以外でバランス取るのは不可能です。敵や味方のメカに、何らかの評価数字を持って来ないとダメだと思います。ファンタジーRPGではレベル(D&D4thではさらに脅威度)、バトルテックでは重量でそれらの目安を作っていたのですが......。

 強いていうなら、装備の金額を計算して、総金額で強さを評価するようにする......しかないかなあ。デザイナーたちは、このシステムで3~4回以上連続して同じPC(&ガラコ)を使うことを想定してないようです。(それもムリからぬ死亡率なので、それはそれでしょうがないが)

 

 実に参考になりました。

 そして、とても気に入りましたよ、ガラコ。またやってみたいです。よろしく、こいでさん。

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コメント(1)

いやー、良い噂しか聞いてなかったですが、そんなに良いなら買ってみようかな、ガラコ。

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このページは、makiyamaが2015年6月17日 22:10に書いた記事です。

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