前の記事で、S型偵察艦が行方不明になったときの最後の通信が「コンピュータウィルスか!?」だという話を書きましたが。
どうしてこれが怖いセリフなのかってことは説明しなくちゃわからないということに気がつきまして。説明いたしましょう。
帝国歴1116。皇帝ストレフォンが貴族デュリナーに暗殺され、帝国が分裂状態に陥りました。
『皇帝暗殺規約』に基づき暗殺者が皇帝を名乗れると主張し、自分こそ皇帝と名乗るデュリナー。
暗殺を生き残った中でもっとも継承権が高いルカン。
皇帝継承権を持つ中では最も広い領土を実際に治めていた実績のあるマーガレット。
さらに、暗殺されたのは影武者だとする"本物の"ストレフォン。このどさくさに独立・領地拡大を狙うソロマニ党。ルカンの双子の兄(故)ヴァリアンを御旗に掲げるヴァリアン派。ヴィラニ人の帝国の再建を目指すヴィランド、ルカンについて行けなくて独立を表明したダイベイ。これまたどさくさに独立したアンタレス。
などなど、いろんな勢力が乱立して、その領地と勢力を争う戦国時代となりました。
......改めて見てみると意外と面白そうだなあ。昔、初めて読んだときには「やな時代になったもんだ」と思ったんですが。歳喰って好みが変わったかな。
ま、それはそれとして、しばらくこの戦国時代が続き、外部からの干渉もあってドタバタしていたのですが、この混乱はあるとき突然に終わりを告げます。
コンピュータウィルスによって、すべてのコンピュータが狂ってしまったのです。
確かデュリナーだったかどこかの勢力の研究所から兵器として作られたものの、ワクチンが作られる前に研究所から漏れ出し、あっという間に広がったのでした。
トラベラー世界では、ニュースのような情報は宇宙船の識別信号(トランスポンダー)に乗せて運ばさせることによって、ちょっとでも早くそして頻繁な通信網をつくっていたのですが(とメガトラになってからいきなり設定が出来たのですが)、ウィルスはこの識別信号に乗って拡散したのでした。つまり、他の宇宙船に近づくと、それだけで感染する。そして、感染した船のコンピュータは数時間後に狂い、使い物にならなくなる。
兇悪です。
情報が広がるのとほぼ同じ速度でウィルスは拡散し、帝国は今まで以上の崩壊を始めます。文明の崩壊です。何しろ電子機器がほとんどダメになるのですから。
もちろん宇宙船は飛べません。当然、他の星系と交易など出来ませんから、経済的に止まる。資源も、機械も止まる。自分ところの星系内でテクノロジーレベルを維持できないような星は真っ先に文明崩壊。資源を他国に頼っている星系も崩壊。
(トラベラーの世界観として、交易が出来ない国は徐々にテックレベルも経済も文明も衰退していくのです)
その他の機械もどんどんダメになります。コンピュータ制御されていない程度のTLの機械だけが残っていきます。
かくして帝国はたった数十年で本物の文明崩壊をしていくことになったのです.........。
......いやになるほど絶望的な将来図ですね。そしてキャンペーン最後のS型偵察艦の通信は、それの始まりを意味している......らしいです(レフリーによると、ウィルス自体が超古代文明のテクノロジーの産物かも知れない、とのこと。つまりPCたちが封印を解いたのかも知れないと......)。
続きはプレイしたくないですねえ......。
まあ、トラベラーのあの異様に性能の低いコンピューターが、ネットワークがないと意味がないコンピュータウィルスにかかるのかという点で釈然としないものはあるんですが。
(これはトラベラーが作られた時代からメガトラが作られた時代までの間に、現実のコンピュータ技術が発達しすぎて、それの帳尻を埋めるためにうやむやにしてたところを逆手にとられたような気がして、それで釈然としないものがあるんだと思います。あとなんか後出しジャンケンのような、気持ち悪さ)
帝国の崩壊は、私自身の感想と同じように感じた海外のファンの方も多いらしく、後にGURPSで作られたトラベラー、いわゆるGURPSトラベラーでは、「皇帝暗殺の起こらなかった世界」が背景世界になっています。もちろん私はこれの方が好きです。
なお、帝国崩壊後は、ふたたび崩壊した世界を探検してまわる「トラベラー:ニューエラ」に続いていきます。まあ、数百年後の話なんですけどね。巨大リヴァイアサン的な話。
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