帝国の分裂。

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 前の話をもう少し詳しく。

 よく読むと、それなりに面白そうな世界ですね。自分自身のまとめの意味でももう少し書くことにします。

 

 と言うわけで、最終的にはトラベラーの第三帝国は崩壊してしまうのですが(しかもかなり天災的な事件で大事も小事もまとめてすべてご破算というむちゃくちゃでひどい終わり方で)、そこに至る混乱の世界はそれなりに魅力的にも思えます。大勢力が武力と政治力を駆使してぶつかり合っている世界は、確かに冒険のネタに事欠きません。

 なので、それこそ『コンピュータウィルスによる文明崩壊』をこそ、なかった世界にして、帝国分裂のまま話を続けてもいいんじゃないかと思いますねえ。

 

 この世界、有力な勢力は3つなんですが、じゃあこれでどうにかなるかというと、お互い決定力に欠けていて、どうにも1つに統一できそうな勢力がないのです。

 一応正統と帝国から認められているのがルカンです。皇帝ストレイフォンの甥に当たります。確かにルカンは現在生きている皇帝継承権の最上位の所持者です。「皇帝暗殺規約」がないとすれば、彼が皇位を継ぐのが当たり前の形です。

 ですが、デュリナーも「皇帝暗殺規約」以外の勝算無しで皇帝を暗殺したわけではありません。皇帝を暗殺すると同時に自身の皇帝継承宣言を発し、あらかじめ用意しておいた軍隊によって、Xボートによる通常のニュースより早く各地に伝達したのです。

 そのため、かなりの地域でデュリナーの皇帝即位宣言が先に届き、まるでデュリナーが正統な皇位継承者であるかのように喧伝されてしまったのです。また、キャピタル(帝国首都)宙域をあらかじめ配置しておいた配下の軍隊で制圧しました。

 つまり、普通のクーデターと同じです。単に首謀者たるデュリナーが「正統後継者」を名乗っているだけです。いやまあ、世界歴史的には「正統後継者」を名乗る人物が複数出てきて混乱・分裂した国はいくらでもあるわけですけど。

 

 しかしルカンの動きがデュリナーの思惑よりも速かったために、デュリナーがキャピタル宙域を押さえる前にルカンが体制を整えてしまいました。

 ルカンは、一応現在生きている最上位の皇位継承権所有者ですが、暗殺が行われるまでは、まず継承することなどあり得ないだろう傍流に過ぎませんでした。暗殺はまさしく、そんな彼の前に棚ぼたとして皇位を落とすことになったのです。

 こういう幸運を得ると、途端に強欲になるタイプの人間がいます。ルカンもそのタイプだったのでしょう。皇位継承宣言を行ったあと、ルカンは自分の勢力の地固めに帝国軍を使い出します。......かなり浅慮かつ独善的に。

 そのひとつが、帝国辺境の軍隊にデュリナー討伐に行くように命令したことです。まったくその地方の情勢のことなど無視して。ダイベイやコリドーなどがその地域です。

 

 ソロマニ党は、皇帝暗殺に最も早く反応した帝国外部勢力です。いや、帝国外部勢力と言ってしまうのはちょっと間違いかも知れません。ソロマニ宙域は帝国の属領として、帝国の一部でしたから。しかしソロマニ宙域はかねてから帝国からの独立の機運が高く、何かにつけて帝国と小競り合いを起こしていました。現代の、イギリスとアイルランドみたいなものでしょうか。ソロマニ主義者が作っているのがソロマニ党で、ここが皇帝暗殺に乗じてソロマニ宙域独立&失地回復を始めたのです。

(だいたい国が「失われた自国領土」と言うとき、歴史上もっとも広かった領土を示すものです......とは桂さんの弁)

 あまりにも速い反応に、デュリナーはソロマニ党とつながっていたんじゃないかという憶測もありますが、事実は闇の中です。実際、デュリナーが自身の軍隊を効果的に動かすために、陽動としてソロマニと手を組んだとしてもおかしくはないでしょう。

 で、このソロマニ宙域と接している帝国側の宙域が、ダイベイです。つまりダイベイは、対ソロマニの要石なのです。現実に、皇帝暗殺後、電撃的に侵攻してきたソロマニをダイベイの駐留艦隊がなんとか撃退しています。

 こんな重要な場所の艦隊を、ルカンは自身の政治的目的のために移動させよと命令してきたのです。この命令に絶望したダイベイ大公は帝国からの離脱を宣言し、駐留艦隊をそのままに据え置きました。いわば、帝国を守るために帝国から離脱したのです。

 逆に、ルカンの命令に従ったコリドー宙域は駐留艦隊がいなくなり、ヴァルグルの勢力に荒らされ放題になってしまいました。ヴァルグルが1つの国家としてまとまっていないがために、まだ略奪レベルで、領地を失うところまではいっていませんが。

 他にアンタレス宙域も独立を宣言しました。

 ダイベイに比べるとこっちはもう少し生臭い話で。アンタレス大公は非人類種族、ヴァルグル人です。皇帝暗殺後、自分にも皇帝の目がワンチャンあるかもとか思っていたアンタレス大公でしたが、人類が非人類種族を皇帝に迎え入れるわけがないと気が付くと、帝国への影響力を保ちつつ国交を断てるよう、アンタレス宙域の独立を宣言したのです。

 他にも、今こそヴィラニ人の帝国を復興させるとき!とばかりヴィラニ人(人類系ですが、地球ではなくヴィラニで進化した)が独立を宣言。......ヴィラニ人の帝国って、3000年くらい昔の話なんですけど。

 

 とまあしっちゃかめっちゃかで、さらに暗殺されたストレフォンは影武者、我こそ本物と名乗りを上げたストレフォン(仮)、さらにルカンの双子の兄で、皇帝暗殺の直後(3分後)に死亡しているヴァリアンこそ皇帝でありルカンは簒奪者と主張するヴァリアン派とか。

 

 こんな混乱状態ですし、ルカンにもデュリナーにも組みしたくない良識的穏健派・保守派はルカンよりもさらに継承順位は落ちるけども、実際にデルファイ宙域を上手く治めており政治方針的にもストレフォンのあとを継ぐであろうデルファイ大公マーガレットを支持しています。ルカン・デュリナーに次ぐ第3勢力です。しかし、穏健派というのは得てして勢力は弱いもので、さらに「皇帝暗殺規約」と「皇位継承権」の両方の法律が無効だと証明できねば法的立場が弱いままという弱点を持っています。

(とはいえ、現代的な判断力を持つプレイヤーには、この勢力に属するのが一番良識的かなと思えることでしょう)

  

 そしてもう一人。

 ここに、デネブ大公ノリスが出てきます。

 ノリスはスピンワード宙域の侯爵でしたが、皇帝暗殺の直前にデネブ大公に位を上げられています。非常に有能な政治家で、宿敵ゾダーン連邦やヴァルグル勢力と接しながら、スピンワードマーチを平和に治めていたのもすべてはノリス大公の手腕によるものです。

 彼の政治はおおむね善政と呼べるものですが、単にお人好し・善人な政治家ではなく、必要なときには非合法手段を執ったり、冷徹な判断も下したりできる支配者です。それがもっともハッキリと出たのが、(時間的には帝国分裂ではなく崩壊の自転になりますが)スピンワード宙域、デネブ宙域を例のコンピュータウィルスから守ったときの話です。

 コンピュータウィルス感染をいち早く察知したノリスは、宙域艦隊によって、コリドー宙域の基点に当たる3つの星系を爆撃、完全に消滅させ、宇宙船が通ることを不可能にして、ウィルスの侵入を防いだのです。当然、それらの星系には帝国市民が住んでいたはずなのですが.........。

(ところで、コンピュータウィルスのことをノリスはどうやって知ったのか、それは謎なのです......あまり突っ込まない方が良さそうな闇が......)

 このノリスの冷酷な判断のおかげで、スピンワードマーチやデネブには文明の火が残り、数百年後の復興の起爆剤となったのです。......なんて言うか、複雑な思いですね。

(ゲーム的には、今までと同じような平和でそこそこTLの高い星々を冒険したければスピンワードマーチやデネブを使ってね、と言うことだったんだと思います)

 

 とまあ、荒れるだけ荒れた帝国でしたが、しかしいくらなんでも、予期しないコンピュータウィルスによる帝国崩壊というのは、ひどいというか、なんか無力感を感じるというか、むちゃくちゃだよな~と思います。

 このあとの時代を舞台にした、新版トラベラーであるトラベラー:ニューエラがあんまりウケなかったのはこれのせいじゃないかな......。

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