クトゥルフの最新サプリは「クトゥルフ・コデックス」という名前です。
コデックスとは写本の意味で......そうか、そうなのか、知らなかった。クトゥルフにふさわしいですね。前の「フラグメント」(断章)よりまとまっているという意味かな。
フラグメントと同じように、過去の外国ものクトゥルフサプリの短め記事の何本かと、日本独自のサプリ+シナリオの合わさった日本独自編集のサプリです。
今回の再録シナリオは「オークション」。
これも、「フラグメント」再録シナリオ「療養所にて」と同じく、かつてHJ社から「療養所の悪魔」というシナリオ集として発売されていたものの一本です。「療養所の悪魔」は短編シナリオが8本入ってて、中でも出来がよかったのが、「療養所の悪魔」「オークション」「モーリタニア」の3本。そのうちの2本が新訳で再録されたわけで、こりゃ次のサプリには「モーリタニア」が載るんだろうなと言う感じ。
もっとも、「療養所にて」と「オークション」は現代日本に置き換えることも出来ますが、「モーリタニア」は大西洋横断豪華客船内での話なので、どうやっても1920年代になってしまいます。NPCも、当時の有名人・怪人・スパイ入り乱れての登場となりますし、そういった意味ではとても面白いのですが、時代背景が有ってこそのものなのです。
なので、現代日本が一番人気の最近のクトゥルフ情勢を考えると、「モーリタニア」じゃなく他の作品になってしまうかも知れません。「療養所の悪魔」にこだわらないんだったら、「巣窟」というシナリオがけっこう出来いいんだけどな。ちょっとダンジョンものっぽいけど。
それから、前回の「キャットルフ」に対応する外国サプリ・追加ルールは、今回はネアンデルタール人になってやる原始人クトゥルフと、クトゥルフ・ホラーショウからの再訳ですかね。
クトゥルフ・ホラーショウはクトゥルフのシステムで、外国の三流ホラー映画(アメリカでは深夜よくこの手のドラマが放送されているらしい......レイト・レイト・レイトショウですね)をやるもので、だからクトゥルフ神話怪物ではなく、普通の(?)狼男や吸血鬼や半魚人がでてくる、ある種三流ホラーをメタ的に笑いながらプレイするねじれたユーモアTRPGシナリオだったのです。ですが、今回選ばれたシナリオは比較的シリアスな雰囲気のものですね。つまりマジメにクトゥルフ(っぽく)プレイ出来る。
あと、「ホラーショウ」の狂気表は本家のものより派手で映画的なので、一部では大変人気がありまして、これも再録されています。これだけのために買うといっている人もいるくらい。
しかし私的に目玉は、平安クトゥルフ。もちろん日本独自記事。
平安時代を舞台に、クトゥルフを遊ぶための追加ルール集です。
まあ平安時代と言っても結構長いので、その全部とはいきませんが。藤原氏全盛ぐらいの前後かな。「羅生門」とかの時代。平清盛や武家の成立よりは前で、だから「もののふ」とか言う言葉はありません。が、武家貴族、つまり武家の前身のような、軍事や治安を治める貴族派閥がありますので、戦闘型キャラクターも普通に作れます。検非違使とか。
ピンとこなけりゃ、菅原道真の怨霊や鵺や酒呑童子などの鬼や地方では土蜘蛛とかああいった連中が蠢いていた時期。そして陰陽師安倍晴明の全盛期。ほらわくわくしてきたでしょう? 暴力的な力を持った妖怪話をやるのにぴったりの時代で、そこにクトゥルフ神話をどう絡めるかも楽しい設定です。
シナリオは2本収録されておりまして。そのうち一本は、作者の坂東真紅郎さんのテストプレイに参加させてもらったやつです。茨木童子と渡辺綱の話。
もうひとつはかぐや姫ネタで、こっちはニョーボが坂東さんに、TRPG文華祭でプレイしてもらって、大変楽しかったシナリオです。こちらは俺、まだ知らない。
クトゥルフTRPGのシステム、これのもともとのベーシックロールプレイというシステムはルーンクエストというこれまた有名なファンtナジーRPGにもなっているんですが。このルーンクエストに近いシステムで、他の背景世界と魔法体系を持ってきたベーシックロールプレイバリエーションとも呼ぶべき一連のシリーズがありまして。
バイキングとか、古代ローマとか出来るんですが、これの中に「ランド・オブ・ニンジャ」というワールドがありまして。はい。もちろん日本、というか東洋を舞台にした世界です。
これがよく出来てましてね。
タイトルからすると、ガイジンの考える間違った「ニッポン」の間違ったチャンバラが展開しそうですが、実は(魔法や神様が存在するというファンタジーな部分は置いておいて)案外マジメにリサーチして作ってあります。ニンジャが各国を行脚して情報を集めるのに旅商人(薬売りとか)に化けるとか、そんなところがマジメに。(もちろん薬売りや薬師も作れる)
キンさんマスターで2~3回やりましたが、面白かった。そして案外、日本のチャンバラっぽくなるんですよ、ベーシックロールプレイは。防御が鎧ではなく、剣などによる受け流しが中心だからかな。
一時期はランド・オブ・ニンジャ、翻訳の予定もあって、実際発売直前までいったのですが、中止になりました。よんどころない事情で。どうしてかって、あんまり詳しくは言えないけど、あんまりにマジメにリサーチしてあったので、これがタブーに触れてしまったのですな。で、中止。
もったいない。と思うんだけど、まあ、デリケートな問題ですしね。
まあ、それはいいや。
とにかくこの「ランド・オブ・ニンジャ」でも実感したのですが、日本のチャンバラは実にベーシックロールプレイに相性がいい。さらに、ルーンクエストの神様の扱いって、案外日本の(現実の私たちの)神様の扱いに似ている部分がありましてね。
一か八かの時に「南無三!」なんて言葉を唱えてしまう年配の方も減りましたが、あれ、本当に効果のある「成功確率を上げる呪文」だとしたらまんまルーンクエストの精霊魔法です。偉大な英雄が死んで神様に祭り上げられたりね。
なので、平安時代も、かなりクトゥルフTRPG向きなのです。妖怪は跋扈するし、鬼は暴れるし、そんでもって神様や陰陽道が信じられて、そして刀で受けと八艘飛び(回避)のチャンチャンバラバラですよ。これはやるしか。
というわけで、平安クトゥルフのためだけに買う価値があります。太鼓判。
ホントは、坂東さんのテストプレイでの話なんかも書きたいですが、シナリオのネタバレになってしまうので、それは我慢の方向性で。
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