幻夢郷の紹介をしたところで、今度は幻夢郷を中心にしたシナリオです。
シナリオタイトルを聞いただけで、わくわくゾクゾクしますよね。
『ピックマンの弟子』。
期待に違わぬ面白いシナリオで、たぶん、ドリームランドネタは初めてだというプレイヤーにも結構楽しめるんじゃないかな。ただ、PCにはドリームランドの知識とかがあった方が楽しいとは思います。前回のシナリオをプロローグにしておくといいかも知れない。
そして、今回のシナリオ、結構長めです。
ドリームランドネタですが、始まりは覚醒の世界から。
1. ネルソン・プレイクリーの災難
ベティの家にいきなり電話がかかってきた。
「私のこと覚えているわよね、ベティ。私ペニー。あなたはミスカトニックの学生だったわよね?助けて欲しいの」
彼女はペニーといって、ある資産家の娘である。ベティとは上流階級のパーティで知り合った。彼女の頼みとは、ベティにミスカトニック大学のシングルメンズ教授かジーフォー教授を紹介して欲しいというものだった。どちらかの教授を連れて、家に来て欲しいとのこと。
それほど親しいわけでもないペニーだったが、彼女の恋人兼支援している芸術家のネルソン・プレイクリー(パーティで紹介を受けていた)が最近、奇妙な事故に遭ったという記事を読んでいたベティは彼女の希望どおり、ジーフォーを連れて彼女のマンションを訪れた。
プレイクリーが遭遇した奇妙な事故...それは、密室の自室の中で溺れるというもの。発見されたときには意識不明の重体状態で、胃や肺の中には大量の海水が入っていた。状況だけ見ればどう考えても海で溺れたとしか思えないのだが、不思議なことに彼の部屋は密室で(発見者は大家で、彼が2つの鍵の1つを持っていた)、内側から鍵がかかっていた。もちろん、部屋の中は、彼が倒れていたソファベッド付近を除いて、海水で濡れていたりはしなかった。
医者の見立てではプレイクリーはいわゆる植物状態で(当時の医学では、植物人間状態と脳死状態が区別できなかったらしい)、回復の見込みはないという。だが恋人であるペニーはそのことを信じず、なにか手段があるはずだと考えていた。病院から彼を引き取り、彼女の館で看病をすることにした。
そのプレイクリーがある時、呻き声を上げ、うわごとのようにジーフォーやシングルメンズ教授の名前を言った。彼らがミスカトニック大学に在籍していることを知ったペニーは、ワラをも掴む気持ちで、ミスカトニック大学の学生であるベティに連絡をしてきた、というわけだ。
ジーフォーの見立てでは、プレイクリーの身体は脹れあがりどす黒く変色しており、まるで溺死体そのものに見えるが、確かに呼吸をし、体温もある。しかし脈はない。しかも、まぶたはしたまぶたと一体化し、目が開かなくなっていた。
微妙なうさんくささを感じたものの、そこに超常的事件の匂いを嗅ぎ取ったベティはペニーに協力することを約束したのだった。
(ここまで、第1回)
2.よき協力者
事故の直前、プレイクリーが自身の描いた初期の作品を買い戻すことに執心していた事を知ったベティとジーフォーは、その絵のことを調べる。絵は4枚あり、それぞれタイトルを『いにしえのユゴス』『たそがれのニューヨーク』『運命』『ルルイエの夜明け』という(題名を聞いてプレイヤーはぶっ飛んでおりました)。
プレイクリーによると、最近スランプだったが、この初期4作品とそれに連なる新作(5枚目)を描き上げればきっとスランプを脱出できるに違いないと信じており、5作目を描きながら、4作を買い戻そうとしていた。
プレイクリーのアトリエを訪ね、描きかけの5枚目を見ると、そのおぞましい画像にショックを受ける(SANチェック)。
5枚の絵になにか手がかりが隠されているに違いないと考えたPCたちはそれを買い戻そうと帳簿を調べ、買い主を捜し出す。
4枚の絵のうち、『運命』は買い主の資産家スタトラーが数ヶ月前に事故死していた。これが一番組み易そうだと考えたPCたちは彼の住処を訪ねるが、頑迷にして愚直な執事に追い返されてしまう。
仕方なく他の絵を捜すことにするPCたち。『いにしえのユゴス』の持ち主であるスティルソンという人物に会いに行く。
スティルソンはそれなりに有名なオカルト研究家で地元の新聞や雑誌に記事を書いている。プレイクリーの友人でもあったスティルソンは、プレイクリーが金に困っている時期に、彼の絵を買い取るという形で資金を提供していた。そのため、あまり『いにしえのユゴス』自体に興味はなく、あっさりとPCたちに絵を譲ってくれる。
ただスティルソンは、絵に興味がなくても、この絵自体に何らかの超常的な因縁があるらしいことには気がついていた。そして、それが今回のプレイクリーの事故に何らかの関わり合いがあるかも知れないと知ると、協力を申し出てくれた。
「プレイクリーの事故の真相を調べてくれ。私が出来ることなら、何でも協力するよ」
その夜、焦燥するペニーを心配して館に泊まり込んだベティは夢の中で絵に引き込まれる。
そこはドリームランドのユゴスだった。そこでベティは怪物たちが奇妙な実験あるいは儀式を行っているのを目撃するが、幸いにして怪物に気づかれる前に夢から脱出することに成功した。
(ここまで第2回)
3.バンクロフト夫人
次のターゲットの絵に『たそがれのニューヨーク』を選んだPCたち。絵はボストンの資産家夫婦に買われていたが、訪ねていくと、その絵はすでに売り払ったという。転々とする絵のゆくえを追っていくと最後に、小さな古書店主兼画商がジェイコブという老人に売ったことがわかった。ジェイコブ老人を訪ねていくと、そこはとても絵など買うとは考えられない貧民街だった。
ジェイコブ老人に絵の話をすると、「絵の良さをわかってくれる人間が来た!」とばかり、大いに喜んだ。ジェイコブ老人はこの絵を大変気に入っており、なけなしの貯金をはたいて絵を買い取ったのだ。
PCたちは絵を褒めあげてジェイコブ老人をおだて、彼が今までの人生で見たこともない大金300ドルを押しつけるようにして絵を買い取った。
3枚目の絵、『ルルイエの夜明け』の購入者はオカルティストとして名高いバンクロフト夫人。彼女は自分の信奉者たちを集め、ボストン郊外の大きな館でオカルトカルト的な共同生活を送っている。
PCたちは彼女に直談判をしに行ったが、バンクロフト夫人は直感からあの絵になにかオカルトティックな力があると信じており、手放そうとしない。その上彼女はスティルソンを敵視しており、最近見る悪夢を、スティルソンの魔術攻撃だと信じていた。
ベティがバンクロフト夫人を説得するときにスティルソンのことを持ち出してしまったために、夫人はPCたちをスティルソンのまわし者と思い込み、態度を硬化させ、信奉者のひとりジェリーを使ってPCたちを追い出した。
対処に困ったPCたちはスティルソンに相談を持ちかける。スティルソンは、スタトラーの遺言を市役所で公開してもらうことや、バンクロフト夫人の信奉者のひとりゼウス教授なら話をわかってもらえる可能性があることなどを語った。
(ここまで、第3回)
うん、3回もあるとまとめるのが大変ですね。そしてついこの間、第4回をやったのですが、これに関してはまた項を改めて書くことにしましょう。
このシナリオ、長いです。なにしろ、覚醒の世界で通常の短編シナリオくらいある上に、それより長い幻夢郷編がそのあとに繋がるのですから。
でもまあ、かなり面白いですよ。
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