ここのところ、MERPとかトラベラーの、システム自体の話をしたら、意外と評判がいいみたいなので、今回も、システムの話を少し。
タイトルにある「一般行為判定」についての話なんですけどね。
今時はいちいち「一般」なんてつけないかもしれませんね。行為判定の方が標準で、戦闘の時には行為判定でどうやって戦闘の各種判定をするかが書かれている、という方が普通でしょう。
けれど、昔は、まず戦闘システムありきで、その他の行為を判定するために、いろいろな判定方が着いていたのですよ。
第2版の頃までのD&Dなんかすごかった。「棒を曲げる(あるいはへし折る)ためのルール」(ベンド・バー)というのがあったりします。他の行為に応用が効くわけでないですよ? それ専用のルールです。(もちろんDMが応用すれば可能だけど、それはDMの裁量であって、ルールにはそんなことをしても良いとかしなさいとか一切書いていない)
初期のTRPGには、ある行為をするための判定法が、行為ごとに規定されていたのです。従って、真面目にルール適用しようとしたら、マスターはゲーム中、年中ルールブックを引っ掻き回していなくてはならなかったのです。(当然その間プレイヤーは待たされる)
流石にそれはまずいといろんな人が感じたのでしょう、次第に統一された判定方法で、いろいろなことを判定するようになりました。例えばD&Dだと、適切な能力値以下を1d20で出す、とか。ルーンクエストあたりだと、技能ごとに成功確率があって、それ以下を1d100でだす、とか(ここらへんはむしろ、一般行為判定を主軸に作ったシステムですね)。この一般行為判定方を備えたシステムを第2世代、とか言ったこともあります。
で、トラベラー。
案外知らない人が多いのですが、実はトラベラーの基本ルールには判定方法がはっきり書いてありません。キャラメイクの際の判定に関しては書いてあるのに、プレイの最中の、戦闘でない一般の行為の判定方法がはっきり書いてないのです。
いくらなんでもそれはまずいだろうと、日本語版ではチャートブックに「2d6で8以上」という基準が書かれました。
これで、どれだけの人が助かったか。
初期のトラベラーのルールブックだけを手に入れて、「一体何をすればいいの?」と途方にくれたユーザーは決して少なくないという話ですが、このひと文(ひとコラム)がなかったら、もっと多かったに違いありません。
(もっとも私は、シナリオの記述から自己流で同じようなことをしていました。くだんのコラムの存在に気がついてなかったのです。自慢かな)
その後、この行為判定に「難易度」という概念が入って来ます。例えば同じ治療でも、設備の整った病院でやるのと、そばで戦闘が起きている状況で治療するのでは難しさが違うでしょうし、そのケガが単なる切り傷か、大動脈出血か、脳震盪かなんてことでも難しさは変わってくるでしょう。
こういったことを反映させるために、次第に「難易度」という概念が取り入れられて来ました。
その点、トラベラーは一般行為システム(UTP)という判定方法を用いました(提唱したのは、メインデザイナーであるマーク・ミラーではなく、サプリを出していたサードパーティです)。
これはレフリーが難易度を4段階の中から選び、能力値修正と技能と、2d6を足した値が難易度によって規定された数値以上だったら、成功、というものです。
他によく似た一般行為判定システムを持っているTRPGシステムもたくさんありますので、トラベラーが最初かどうかはわかりません(少なくとも日本では最初ではない)。ただ、そこに書いてある 文章や、システム自体のあかぬけなさ、やりたいことがブレていることなどからすると、かなり初期のものであることは間違いないと思われます。
そしてこのシステムは能力値(の修正値)+技能+サイコロで、マスターの決めた目標値を上回れば成功...という形で、TRPGの行為判定システムの標準になって行くのでした。
まあ、これは判定方法が、計算して出した数字が高い方がいいという、いわゆる「上方判定」システムの話で、もうひとつ「下方判定」、すなわちはルーンクエスト(やその派生のクトゥルフ神話RPG)のようなシステムはまた違って来ます。ヘタな難易度の着け方をすると、あるキャラクターにはまったく成功可能性が無くなるという事態が簡単に起きてしまうのです。「絶対成功」という範囲を作って、最低限の成功確率を確保しておくのが精一杯でした。
他にも、他のところは引き算をしなくてはならない(ルーンクエストに至っては二ケタの計算です)など、いろいろ欠点があり、あまりうまい難易度の付け方ではなかったと思います。D&D2版の能力値以下を出す行為判定に至っては、キャラクターの能力値幅が大きいので、難易度を公平につけた上でゲームとして楽しむのはほぼ不可能ということになりがちでした。こちらの難易度の付け方でスマートなのは「007:ジェームス・ボンドアドベベンチャー」なのですが、如何せん、これは煩雑で、上方判定主流に対抗できるものではありませんでした。このためにしばらく下方判定方はマイナーになっていたのですが、最近また、下方判定のシステムが増えて来ました。
とはいえ、007も、効果レーティングとか、面白いシステムを持っていたのですがねえ。そのうち、やってみたいものです。
ちょっと脱線。
このように、すべての判定が一般行為判定に集約されて行くにつれ、マスターはルールを頭の中に入れておくことができるようになりました。マスターはルールブックと首っ引きでマスタリングし、ルールを調べるためにプレイを中断するという事態を起こさないで済むようになっていったのです。
※※※......電車の中で書いた記事で、時間がなくて、結論部分がないという和訳ちゃ名構成だったので、加筆、訂正いたしました。
確かに最近はSTR18(00)とか見ませんね。
近頃のゲームで下方判定と言うとブレカナとかを思い付きますね。