『キャッスル・フォルケンシュタイン』。

　で、このシステム、洋物にしてはかなり緩いです。ワーウルフなどのストーリーテリングシステムも緩いですが、アレよりもう一回り緩いです。ゆるゆるです。

　判定方法は、技能の基本値+手札から出したカードの数値。技能の分類と合ったスートを出せればその数値がそのまま足され、合ってないカードならばどんなカードでも1点。手札は4枚ですが、手札から出せるカードは複数枚ＯＫなので、意外と高い数字も出せます。こうやって出した達成値が、目標値をどれだけ上回っていたかで、効果が決まります。

　システムが緩ければ、背景世界も緩いです。

　世界は、19世紀のヨーロッパ......によく似たパラレルワールドです。違う点は２つ。ひとつは先ほども言いました、妖精族（ドワーフも含む）やドラゴンがいる点。妖精王オベロンがいる世界ですから。そしてもひとつは、ヨーロッパに隕石による大穴が開いてまして、地形的にドイツとオーストラリアのあたりが非常に通りにくくなっております。

　この地形的変更が、すごく大きい変更点でして。

　ルネッサンス以降のヨーロッパの色々な政治情勢に詳しい人なら納得するらしいですが（私は理解し切れてない）、これ、ドイツ（プロイセン）が統一出来ない理由になっています。オーストリアが唯一の通路になってしまうので。つまり、このパラレルワールドには統一ドイツ帝国が存在せず、つまりプロイセンが常に周辺諸国を統一しようとしながら果たせないでいるという......。そこそこ大きな帝国が周辺を統合しようとして虎視眈々と狙い、それに対抗する弱小連合、という形はルーンクエストでもおなじみの構造で、悪役とそれにいじめられる弱者という構図になるワケですよ。

　このパラレルワールドで繰り広げられる政治的冒険は、なかなかくるものがあります。好きな人には堪らん。架空の悪役じゃないですよ？　ビスマルク鉄血宰相ですよ？大プロイセンの祖国統一運動ですよ？うう～ん。このＩＦ具合が実に刺激的。

　まあ、実際に日本でここらへんに詳しい人にはマルチっぽいウォーゲーマーかヘタリアのファンの人たちなので、やっぱマイナーテーマには違いないのですがね。

　とにかく、強大な悪役がいて、魔法が存在して、そしてスチームパンクなので当然超科学技術も存在する。なので、実に簡単に悪役や大仕掛けのギミックを出せる。いざとなったら「プロイセンの仕業」「魔法力」「マッドサイエンス」と逃げられるわけですよ。ああ、ゆるゆる。

　とまあ、実に、一部の人には魅力的な世界とシステムなのですが。

　残念なことに、これを完璧に味わい尽くすためには豊かな教養とかなりのＲＰＧプレイングの技術が必要でして（特にマスターに）。......まあ、ここらへんがいまいち受けなかった理由だろうなあ。

　例えば、相手を言いくるめるにしても、「＜演技＞でウソをつきます」だけじゃなくて、「＜医学＞で医学用語を怒濤のように並べ立て、煙に巻きます」とか「＜社交＞で、『紳士はそのような細かいことまで知ることはないのですよ』と納得させる」とか、そういうことがその場でとっさにいくらでも出てくるような人じゃないと、楽しみきれないと思います（逆にこれが出来る人には、すっごくやりやすい）。

　というわけで、若干人を選ぶシステムですが、それを月曜日、たっぷりと堪能してきました。

　ホスト......桂さん

　カリオストレ・ド・サンジェルマン伯爵（自称）　......私

　アルデンテ・フォールド（猫）......娘

　ルーナ（竜の貴族）......佐々野さん

　......人間が俺しかいない。ちなみに猫は、別にそんなクラスがあるわけで無く、娘のアイディアにホストの桂さんがＯＫを出したもの。佐々野さんの方は、ちゃんとテンプレにありますけどね。

　ちなみに私のサンジェルマン伯爵は、本当は詐欺師です。魔術でがらくたを宝石に見せかけ、それを貴族に売りつけるという。錬金術と言えば錬金術なわけですけどね。

　確か魔術師テンプレートを使ったのではなく、フルスクラッチで作ったんじゃないかな。作ったの、12年以上前なので忘れてます。

　シナリオはＲＰＧamer９号に掲載された『線路は続く』。

　固有名詞は忘れてしまったので、かなり端折って書きますと、ですね。

　ニュー・ヨーロッパ（フォルケンシュタインの舞台）では折しも鉄道ブーム。ニューヨーロッパのあちこちで鉄道が作られ、それらが連結し、一大鉄道網が完成しようとしていました。

　中でも勢いのある二社がローターとシュバルツァー。ローターは高品質なサービスと速度で評判を得ている会社。対してシュバルツァーは、なんだかわからないけどライバル社が不運に見舞われ自爆して脱落して行く中（笑）、生き残って現在の地位を獲得していたのでした。

　そして、今、まさにウィーンからパリを結ぶ弾丸鉄道がローター社によって完成、その処女運行が行われようとしていました。

　で、ルーナはローター氏の古くからの知り合いでして、この列車の処女運行に招かれます。

　カリオストレはカモを......もとへ、上客を捜すためにローター氏と懇意になり、この弾丸列車に乗り込みます。

　アルデンテは、狭いところに入って寝てたら、いつの間にかそこが動き出していたとか。

　まあ、そんなわけで、三人というか、ふたりと一匹というか、一人と二匹というか、ＰＣたちは列車に乗り合わせたのです。当然、この処女運行がトラブル無しで済むはずもなく。

　食堂車洗い場の水が噴出したり、トイレで同じことが起きたりと、安全には関係ないが上流階級のゲストたちには耐えきれないような不快なトラブルが続出しました。ところが、この一連のトラブルが人為的なものであることは猫のアルデンテがすべて目撃していているんですな。ま、問題は彼（彼女？）には人間様に報告する義務なんかはないってことですが。

　それでもアルデンテを食堂車で拾ったルーナは、怪しい紳士（機械油の匂いをぷんぷんさせている）に気が付き、彼を問い詰めます。ちょうど、彼を怪しいと思っていたカリオストレも加わって、彼を追い詰めますと、彼は逃げ出しました......機関車と給水車のある先頭車両の方へ。

　機械には無知であるこの三人もさすがにこれはまずいと気が付き、その紳士を追いかけます。そして、ちょっとしたアクションシーンのあと、彼を取り押さえ尋問をしました。

　彼はカリオストレの見抜いたとおり、上流階級の紳士ではなく、貧しい機関技術者でした。彼はシュバルッツァーから大金を受けとり、弾丸列車に嫌がらせのようなトラブルを起こしていたのでした。なぜなら彼には病気の治療のために大金のかかる妹がいたからです。

　彼をルーナが＜財力＞で説得し（笑）、すべての悪事を証言させることにして、シュバルッツァーの計画を聞き出します。それによると、弾丸列車を護衛・監視しているはずの飛行船の船長も、なんとシュバルッツァーに買収されているのだとか。船長の役割は最終段階の嫌がらせとして、機関車の煙突にＵ字パイプをかぶせ、機関車の排煙を客車内に逆流させること。もちろんそんなことをすれば上流階級のゲストたちの服は汚れ、息は苦しくなり、彼らの記憶に最低最悪の想い出としてこの処女運行が刻まれるでしょう......そうなれば、ローター氏の会社は資金を失い、すぐにでも倒産してしまいます。

　なんとしてでもこれを防がねばならないと決意した三人（1人と2匹？）は計画を立てます。

　まず、ルーナが竜の姿に戻ってアルデンテを乗せ、飛行船に飛びます。アルデンテは船長を攻撃し行動を妨害。同時にルーナは飛行船の外から、そのマジックハンドに用意されたＵ字パイプを破壊し、船長の計画を二段階で防ぐ作戦です。カリオストレの役目は魔術（幻術）でルーナを援護すること。

　しかし飛行船がＵ字パイプを持って近づいてきても、カリオストレは魔術に必要なマナを集めることが出来ません。仕方なく援護無しでルーナとアルデンテは作戦を実行。飛行船に飛び移ります。

　ですが、船長は列車の窓から身を乗り出してことの成り行きを見守っていたローター氏の娘さんを発見、これを人質にしようと、空いているマジックハンドで彼女を捕まえます。それを阻止するべく空中戦を挑むルーナ。３ラウンドの空中戦と、アルデンテの船長への直接攻撃により、なんとかローター氏の娘さんを無事奪回することに成功しました。アルデンテの攻撃に戦意を失いかけていた船長を、ふたたびルーナが＜財力＞で説得して、なんとかシュバルッツァーの嫌がらせ計画を頓挫させることに成功しました。

　居合わせた新聞記者の書いた記事により、シュバルッツァーの悪事はバレ、かの会社は倒産の憂き目に。そしてローター氏の誠実な鉄道会社がニュー・ヨーロッパの覇権を握ったのでした。

　......まあ、こんな感じの展開で。

　私の持ちキャラ、カリオストレ、途中まではそれなりに活躍していたのですが（上手い具合に手札を回せた）、魔術を使おうとマナを集めるのに専念し始めたあたりからちょっとまずくなってしまいまして。『フォルケンシュタイン』では魔術を使うためにマナを集める必要があるのですが、これは普段使っているのとは違う、専用のマナデッキ（もう一組のトランプ）を用意して、これをめくって貯めるのですね。目標のスート（今回はハート）が数値通りのマナ、それ以外は１点。

　.........でね。10枚めくって１枚もハートが出ないとか、どうよ？　ええ？

　理論上では６枚めくった段階で達成出来るかも知れないと思っていたのに。

　一枚めくるごとに切って切って切りまくったのですけどね、マナデッキ。それでも出ない。計画前に６枚、計画が始まってから４枚めくったのだけど、ハートが一枚も混じらない。

　おかげで全然活躍出来ませんでした。いや途中でマナあきらめるという選択肢もあったのですが、ルーナに飛行船に何度も往復してもらうのもちょっとなんだったので。

　でも端で見ているだけでもとても面白いクライマックスだったのは事実です。竜と猫。その特性をめいっぱい活かした展開でしたし。スチーム（蒸気機関車だし）でファンタジー（竜が出てくるし）でメルヒェン（猫だし）な展開。

　またそのうちにやりたいシステムのひとつです。今度は藤浪さんのキャラとコンビ組みたいな～。